新型インフルエンザが発生したらこのページを印刷する

どのような発生段階があり、どんな健康被害が想定されているのでしょうか?

監修:岡部 信彦 (前 国立感染症研究所感染症情報センター長)

いまの日本はパンデミックアラート期

いまは対策を検討・準備するための貴重な時期

WHO(世界保健機関)では、新型インフルエンザ流行についての警報フェーズ(段階)を6つに分けており、2009年6月11日現在、フェーズ「6」への引き上げを発表しました。
日本ではこれに加え、新型インフルエンザが国内で発生していない段階を「A」、国内で発生してからの段階を「B」と分類していますから、いまの日本は「4B」ということになります。
世界のどこかでヒトからヒトへの感染が増加しはじめた状況になると、1段階進んだ「4」になります。ヒトは新型インフルエンザウイルスに対する免疫がないため、そこからは短時間で感染が拡大し、世界的な流行(パンデミック)となる可能性があり、これをフェーズ5,6としています。
いまは新型インフルエンザ・パンデミックに突入した場合の対策をしっかりと検討したり準備したりできる、貴重な時期であるといえます。

WHOによるパンデミックインフルエンザ警報フェーズ

(2009年6月11日現在)

パンデミック間期

動物間に新しい亜型ウイルスが存在するがヒト感染はない
ヒト感染のリスクは低い 1
ヒト感染のリスクはより高い 2
パンデミックアラート期

新しい亜型ウイルスによるヒト感染発生
ヒト-ヒト感染は無いか、または極めて限定されている 3
ヒト-ヒト感染が増加していることの証拠がある 4
かなりの数のヒト-ヒト感染があることの証拠がある 5
パンデミック期 効率よく持続したヒト-ヒト感染が確立 6

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日本で採用されている「発生段階」と方針

WHOによるパンデミックインフルエンザ警報フェーズとは別に、最近日本では、国内での状況と対策を分かりやすくするため、図のような表し方をしています。

平成21年2月に「新型インフルエンザ対策行動計画」が改定され、従来採用されていた発生段階の分類は次のように変更されています。
1,2A,2B,3A,3B → 前段階(未発生期)
4A,5A,6A → 第一段階(海外発生期)
4B → 第二段階(国内発生早期)
6B,6B → 第三段階(感染拡大期、蔓延期、回復期)
後パンデミック期 → 第四段階(小康期)

発生段階と方針

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日本では4人に1人が発症する可能性をまず考え、対策を

最悪の被害を想定して対策を

新型インフルエンザが流行した場合、過去のパンデミックの状況などから予測される感染者数を人口の25%とまず仮定して感染者などの推計を行うということがMeltzerら(米国)の推計モデルが応用されており、これを日本に当てはめた場合の、患者発生状況は、次のようになります。対策を立てるためにまず目標値としたもので、これに対するステップが整ったら、次の手を打っていくことになります。

健康被害の推計(厚労省:新型インフルエンザ対策行動計画,2005)

感染者  人口の25%

受診者  1300〜2500万人

入院*     53〜200万人

死亡*     17〜64万人(現在の人口13000万人)

*入院・死亡は、被害が比較的少なかったアジア型から被害が大きかったスペイン型までを想定したもの。

参考:スペインインフルエンザ(1918〜19)の被害

感染者  38〜42%

死亡     38〜45万人(当時の人口5500万人)

社会的影響も懸念される新型インフルエンザ

新型インフルエンザが流行した時の患者数や死亡者数の予測は、あくまでも過去の流行状況を参考にして計算されたものであり、今後発生するかもしれない新型インフルエンザについての被害は正確には算定が出来ません。
しかし患者数が一定以上、急に増えれば、医療機関の混乱だけではなく、社会全体にも影響が出てきます。もしそれに対する備えの無いまま患者数が急増した場合には、影響として次のようなものが想定されます。

  • 膨大な数の感染者と死亡者の増加
  • 社会不安によるパニック、治安の悪化
  • 医療従事者の発病による医療サービスの低下
  • 食料品・生活必需品、公共サービスの提供に従事する人(交通・通信・電気・食料・水道など)の発病による物資の不足やサービスの停止
  • 行政サービスの水準低下
  • 日常生活の制限
  • 事業活動の制限や事業者の倒産
  • 莫大な経済的損失

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新型インフルエンザの重症化、若い人も要注意

新型インフルエンザは通常のインフルエンザよりも重症化しやすいことも考えられる

ほとんどのヒトが新型インフルエンザウイルスに対する免疫を持っていないため、通常のインフルエンザより爆発的に感染が拡大し、多くの人が罹患することがまず考えられます。
また通常のインフルエンザよりも肺炎などの合併症や全身症状の悪化などを起こし死亡する人が多くなる可能性も想定すべき、とされています。過去の例では、スペイン型インフルエンザにおける致死率はおよそ2%であったといわれています。
新型インフルエンザの感染力も症状も現段階では未知数ですが、少なくとも過去に生じたレベルは、備えるための目安となる数値であると言えるでしょう。

若いから安心というわけではない

通常のインフルエンザで死にいたる割合は、年齢層では高齢者が圧倒的に高いのですが、スペイン型インフルエンザのときは、若年層を中心とする年齢層でも重症化しやすかったことが知られています。
次に来るであろう新型インフルエンザについても各年齢層での注意が必要で、若いから安心だとはいえません。

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監修者紹介

岡部 信彦(前 国立感染症研究所感染症情報センター長)
1971年東京慈恵会医科大学卒業。同大学小児科で研修後、帝京大学小児科助手、その後慈恵医大小児科助手。国立小児病院感染科医員、神奈川県衛生看護専門学校付属病院小児科部長。1991年〜1994年、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ市)伝染病疾患予防対策課課長。1994-1997年慈恵医大小児科助教授。1997年国立感染症研究所感染症情報センター・室長。2000年、同研究所感染症情報センター長。2012年、川崎市衛生研究所所長。

岡部 信彦先生

岡部先生からのメッセージ

新型インフルエンザは、近い将来、かならず出現すると考えられています。人類が経験したことのないインフルエンザウイルスに会えば、だれも免疫による抵抗力を持っていないため、地球上の広い範囲で大流行し、大きな被害をもたらすおそれがあります。このような状態をインフルエンザ・パンデミックといいます。
インフルエンザ・パンデミックによる被害を最小限にするためには、国や自治体による対策を進めるほか、事業所や個人による感染予防対策、感染した人への適切な対応がとても大切になります。そのためにも、新型インフルエンザについての基本的な知識を身につけていただきたいと考えています。

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