パンデミックへの社会的対策このページを印刷する

国内でパンデミックが発生した場合、自治体や職場ではどう対処するのでしょうか?

監修:岡部 信彦 (前 国立感染症研究所感染症情報センター長)

急速な感染の拡がりを防ぐ、「社会距離戦略(Social Distancing)」

可能な限り、ヒトとヒトとの接触を減らす

新型インフルエンザなど感染症の爆発的流行に対して、薬物やワクチンなどの医学的な対策の他に、社会全体での取り組みも必要になります。その方法の一つとして、「社会距離戦略(Social Distancing)」が議論されています。感染症はヒトが動き、ヒトが密集することにより感染が拡大しやすくなるので、感染したヒトと、感染していないヒトの距離をあけ、接触を可能な限り減少させるという方法です。

これまでのパンデミック発生時の経験を踏まえて、学校、映画館といった公共施設の閉鎖や、集会の中止や延期などが考えられています。また、職場や家庭においても接触機会を減らすことも重要です。
パンデミックの発生時、感染している可能性のあるヒトとの接触を極力減らすための生活パターンをあらかじめ考えておいたり、あるいは外出機会を減らすために生活必需品を備蓄しておくなどの対策が勧められます。

国や地域での対策

新型インフルエンザ発生時には、感染の急速な広がりを抑え、被害をできる限り小さくするために、国や自治体における対策はもちろん、会社などの事業所や個人が必要な準備を進め、実際に発生した際は適切に対応していくため、次のようなことを目指した仕組みづくりが進められています。

  1. 検疫における水際対策により国内への侵入を遅らせる。
  2. いったん侵入した場合の早期段階の封じ込め戦略。
  3. 感染拡大時の対応策の検討。薬、ワクチン、医療などの他、社会的距離戦略などにより国内での流行を遅らせ、流行のピークを小さくし、全体の患者数と重症者数を減少させる。
  4. パンデミックワクチンの完成・流通により、感染の予防を行う。

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新型インフルエンザ国内発生時の職場での対策

事業所・職場のためのガイドライン

新型インフルエンザウイルスは現段階では世界中で未発生期であり、現在の日本は、鳥インフルエンザウイルスのヒト発症例もないところから、「未発生段階」です。しかし、もし国内でヒトからヒトへの感染が確認されたら「国内発生早期」となり、日本でもパンデミックが起こる可能性が一挙に高まります。このような事態になったとき、職場ではどのような対応をしたらいいのでしょう。
国(がまとめた新型インフルエンザ対策ガイドライン(新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議発行)では、事業所・職場でできる対策例もまとめています。その中から、国内発生早期→感染拡大期→まん延期→回復期を想定したときの対策の例を紹介しましょう。 なお、ガイドラインは、一つの目安です。すべての段階で、すべてのことを行うのではなく、想定の中からその職場に応じた対策の選択が必要です。

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新型インフルエンザ国内発生早期以降の職場での対策例:一般的な留意事項

一般的な留意事項

  • *38度以上の発熱、咳、全身倦怠感等のインフルエンザ様症状があれば出社しないこと。
  • *不要不急の外出や集会を自粛するとともに、不特定多数の集まる場所に近寄らないようにすること。
  • *外出を余儀なくされた場合も公共交通機関のラッシュの時間帯を避けるなど、人混みに近づかないこと。
  • *症状のある人(咳やくしゃみなど)には極力近づかないこと。接触した場合、手洗い、洗顔などを行うこと。
  • *手で顔を触らないこと(接触感染を避けるため)。

職場における感染防止策の実行(立ち入り制限や対人距離の確保)

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新型インフルエンザ国内発生早期以降の職場での対策例

職場の清掃・消毒

  • 毎日、職場の清掃・消毒を行う。特に多くの人々が接する場所(玄関のドアノブ、 訪問者用のトイレ等)は、清掃・消毒の頻度を上げる。
  • 現時点において、新型インフルエンザウイルスの主な感染経路が飛沫感染、接触感染であることを前提とすると、事業所等が空気感染を想定した対策を講じる必要はないと考えられる。

従業員の健康状態の確認等

  • 欠勤した従業員本人や家族の健康状態の確認(発熱の有無や発症者との接触可能性の確認)や欠勤理由の把握を行い、本人や家族が感染した疑いがある場合には連絡するよう指導する。

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新型インフルエンザ国内発生早期以降の職場での対策例

事業所で従業員が発症した場合の対処

  • 発症の疑いのある者を会議室等に移動させ、他者との接触を防ぐ。発症者が自力で会議室に向かうことができない場合は、個人防護具を装着した作業班が発症者にマスクを着けさせた上で援助する。
  • 事業者は、保健所等に設置される予定の発熱相談センターに連絡し、発症した日付と現在の症状を伝え、今後の治療方針(搬送先や搬送方法)について指示を受ける。地域の感染拡大の状況により、入院の勧告から自宅療養まで治療方針は刻々と変化するので、発症者を確認するたびに指示を受けることが望ましい。

従業員の家族が発症した場合の対処

  • 従業員本人だけでなく、同居する家族等の発症や従業員の感染者との接触についても把握することが望ましい。
  • 同居家族が発症した場合、従業員自身又は連絡を受けた事業者は、発熱相談センター(保健所)に連絡して指示を受ける。
  • 濃厚接触の可能性が高いと判断される場合は、保健所から外出自粛等を要請される。
  • 自宅待機等の期間が経過した後も発症しなかった場合は、発熱相談センター(保健所)の意見も踏まえ、その時点で改めて出社の可否を検討する。

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新型インフルエンザ国内感染拡大期、まん延期、回復期の職場での対策

第三段階(感染拡大期、まん延期、回復期)

  • 新型インフルエンザ拡大時には、引き続きあらかじめ検討した国内発生以降の感染防止策を徹底することが基本となる。その際、発生段階に応じた国や都道府県等の治療方針に従って行動する。
  • *現段階における治療方針としては、初期段階は入院勧告を受けることが想定されている。まん延期には、患者の症状の程度から入院の必要性の有無を判断することになる。発熱外来において、患者に入院治療の必要性が認められなければ、必要に応じて投薬を行い、極力自宅での療養を勧めることとしている。
  • *仮に、発熱相談センターから社用車や自家用車等での搬送を指示された場合は、発症者の搬送は、個人防護具を装着した作業班が発症者にマスクを着けさせた上で行う。使用した自動車は、発症者の飛沫が付着したり、発症者が触った箇所を中心に消毒を行うことで、他の者が感染するリスクを低減できる。
  • 従業員が多数発症することを想定して、従業員の感染状況把握や支援の必要性等の有無について情報収集・共有を図る体制を整備する。

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新型インフルエンザ対策でも重要な体温チェック

欠かせない体温チェック

インフルエンザの発症は、発熱がもっとも分かりやすい目安となります。家庭や職場で手軽にできるチェック方法として、体温計測は欠かせません。

38度以上の発熱、咳、全身倦怠感等のインフルエンザ様症状があれば出社しないこと。

職場への入場制限や、出勤時の従業員の体温測定など、事前に定めた感染防止策を実行する。
ご家庭で発熱がないか確認
職場の入口でも体温チェック

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監修者紹介

岡部 信彦(前 国立感染症研究所感染症情報センター長)
1971年東京慈恵会医科大学卒業。同大学小児科で研修後、帝京大学小児科助手、その後慈恵医大小児科助手。国立小児病院感染科医員、神奈川県衛生看護専門学校付属病院小児科部長。1991年〜1994年、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ市)伝染病疾患予防対策課課長。1994-1997年慈恵医大小児科助教授。1997年国立感染症研究所感染症情報センター・室長。2000年、同研究所感染症情報センター長。2012年、川崎市衛生研究所所長。

岡部 信彦先生

岡部先生からのメッセージ

新型インフルエンザは、近い将来、かならず出現すると考えられています。人類が経験したことのないインフルエンザウイルスに会えば、だれも免疫による抵抗力を持っていないため、地球上の広い範囲で大流行し、大きな被害をもたらすおそれがあります。このような状態をインフルエンザ・パンデミックといいます。
インフルエンザ・パンデミックによる被害を最小限にするためには、国や自治体による対策を進めるほか、事業所や個人による感染予防対策、感染した人への適切な対応がとても大切になります。そのためにも、新型インフルエンザについての基本的な知識を身につけていただきたいと考えています。

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