熱中症の予防法と対策このページを印刷する

熱中症は暑い環境でスポーツや労働をしているときのほか、通常の生活時にも起こります。体がだるくなって思うように動かない、筋肉がけいれんする、頭痛、めまい、動悸がするなど、自分にとって普通でない症状が出てきたら、危険な状態といえます。またお年寄りや子どもの場合は、周りの人が注意して見てあげることも必要です。
熱中症は、最悪の場合は死に至るケースもありますが、早めに適切に対処すればほとんどはおさまります。さらに望ましいのは、熱中症に対する知識を深め、的確な予防措置を講じておくことです。

監修:稲葉 裕(実践女子大学生活科学部・食生活科学科 教授)

3.スポーツ時の熱中症を防ぐには

持久走やダッシュのくり返しには、とくにご注意。
種目別では団体での球技、柔道・剣道など。

運動時に起こる熱中症は、高温環境で運動したときに起こるもので、毎年、おもに夏の間、死亡事故が発生しています。事故全体の実態は必ずしも明らかではありませんが、学校管理下での事故については、日本スポーツ振興センターの資料があります。このうち1975年からの30年間に起こった熱中症死亡事故をスポーツ種目別にみると、野球が最も多く、ついでラグビー、サッカーと団体競技が続いています。個人競技である柔道もサッカーと同数であり、次に多いのが剣道となっています。
事故原因については明らかでありませんが、どの種目でも共通しているのは、継続するランニングで多く起こっていることです。また団体での球技で事故が多いのは、苦しくなっても「自分が勝手に抜けたらみんなに迷惑がかかる」といった責任感から無理をしてしまうことで、事故に結びつくことが考えられます。柔道や剣道は、夏でも厚い柔道着や防具をつけて運動する関係上、熱放散が充分に行われないため、体内に熱がこもってしまう「うつ熱」が大きくなった結果、事故となることが考えられます。
スポーツ種目別の熱中症死亡数

熱中症を予防するには、のどがかわく前からの水分補給。
そして塩分の補給も忘れずに。

人は暑いと汗をかき、汗が蒸発するときに体の熱を奪う作用によって、上ってきた体温を元に戻そうとします。大量の汗をかいているのに水を飲まないでいると、体から水分が失われ、「脱水」が起こり、体温調節能力や運動能力が低下してきて、やがて熱中症の症状が出てきます。
ですから暑いときには、のどがかわく前から、こまめに水分を補給しましょう。また汗からは、水と同時に塩分も失われます。塩分が不足すると脱水からの回復が遅れますから、0.1〜0.2%の塩分を含んだ水を補給するのがいいとされています。スポーツドリンクなどで「ナトリウム」として表示されている場合、その数字を2.5倍すると大体の食塩量になります。したがって表示を見て100mLあたりのナトリウム量が40〜80mgであれば、食塩は0.1〜0.2グラム、つまり0.1〜0.2%の食塩水にあたります。もし濃すぎる場合は、水で薄めて調整します。

塩分を補給しないと、充分な水が飲めない。
水だけを補給していると、「熱けいれん」を起こすことがあります。また脱水になってから水を飲もうとしても、失った水分に見合う量の水を飲めないことがあります。水だけを飲むと、血液の塩分濃度が薄まってしまうため、それを防ぐために体が水分を欲しがらなくなるのです。したがって、熱中症の予防や、熱中症の回復には、塩分を含んだ飲み物が効果的なのです。

スポーツをする前と後に体重を量り
体重減少が2%以内になるように、水分を補給する。

運動の前と後に体重を量ると、運動中に汗などで失われた水分量が求められます。体重の3%の水分が失われると運動能力や体温調節機能が低下し、熱中症の恐れが出てきますので、運動による体重減少が2%を超えないように、こまめな水分補給を心がけてください。「運動の後、○kg体重が減った」などと自慢する人がいますが、これはおもに水分が失われているだけですから、百害あって一利なしです。

100グラムの汗で、体温は約1℃低下する。
運動によって、体で作られる熱の量が増えたり、暑い環境で体温が上昇して熱を放散する必要性が出てくると、私たちの体は、汗をかくことで水分蒸発を盛んにし、体温を下げようとします。 汗によってどれくらい体温が下がるかは、環境条件によっても変わりますが、100gの汗で、おおむね1℃体温を低下させることができます。ですから、しっかりと水分補給をして充分に汗をかけるようにしておくことが、熱中症の予防につながるのです。ただし、風がなくて湿度が高いところでは、汗の蒸発が妨げられるので、それほど体温は下がりません。

スポーツを指導する人が覚えておきたい熱中症発生を防ぐための心がけ。

夏のトレーニングは熱中症の危険性が高くなります。とくに学童期は心身が未発達なため、余力を残した、スポーツ障害を起こさせない指導を常に考える必要があります。

トレーニング計画

  1. トレーニングの位置づけを明確に
    鍛錬期、調整期、試合期など、位置づけを明確にしたトレーニングの内容や健康管理への配慮を。
  2. 高温下での体力に配慮した計画を
    常温下より体への負担が大きいことに配慮した計画づくりを。
  3. 休養日を適切に
    体重減少がみられる場合は、予定した以外にも休養日を。
  4. 良い環境でトレーニングを
    屋内なら冷房付きの施設、屋外なら涼しい時間帯や場所で。
  5. 水分補給や休憩を適切に
    休憩のタイミングや時間、水分補給も計画に盛り込む。
  6. 軽めの練習で、まず暑さに体をならす
    暑熱馴化の期間を設けて計画を作る。
  7. 合宿には充分な休息時間を
    合宿では練習頻度が増えがちです。充分な休息時間を。

安全面への配慮

  1. 熱中症に対する知識や認識を持つ
    熱中症についての基本的な知識を持ち、知識に基づいた実際の判断ができるようにしておく。
  2. 環境条件に応じた運動・休息・水分補給を
    夏でも環境条件は一様ではなく、その日の気温、湿度、日照、風速、また練習場所によってもコンディションは変わるので、状況に応じて休息や水分補給の回数を加減する。
  3. 個人差を考える
    熱に対する耐性は個人差が大きいことに配慮を。学校管理下の熱中症は、低学年・肥満度の高い子どもに多く発生しています。

WBGTを測定する

とくに屋外での熱中症は、温度・湿度・風速だけでなく輻射熱が大きく影響しますので、気温だけに頼るのは不安です。できればWBGTを測定できるWBGT計(湿球黒球温度計=暑さ指数計)を備えれば事故防止に有効です。

コンディション・チェック

指導者は選手の細かな動作や表情からコンディションを判断する必要があります。異状を見つけて選手に確認しても「大丈夫です」と答える場合があるので注意が必要です。

  1. セルフチェック
    トレーニング負荷が適切か、疲労が回復しているかを確認するため、セルフチェックをしてコンディションを把握します。
    <セルフチェックの指標>
    心拍数/血圧/体温(耳式体温計など)/体重/平衡機能テスト(閉眼片足立ちテスト、マンテストなど)/自覚的コンディション(体調、疲労、睡眠状況)/トレーニング内容(強度、量、時間など)/POMS(Profile of Mood States:質問紙)
  2. 指導者によるチェック
    セルフチェックではわからないコンディションの違いが、トレーニング負荷を与えると現れることもあります。とくにウォーミングアップ時の観察は有効です。
  3. コンディション・チェックの注意点
    継続してチェックを続け、からだ面・技術面・精神面を考えながら評価します。セルフチェックについては、選手だけでなく保護者とも協力し、家庭でのコンディション作りの重要性を意識づけることが大切です。

ふだんから体温を測定する

体調が悪い原因が何らかの病気である場合、体温を測ることで発見できる場合があります。ふだんから起床時、午前、午後、夜の計4回体温を測り、時間帯ごとの平熱としておぼえておけば、何時に体温を測っても、発熱の有無を判断することができます。

耳式体温計 ワキ下用体温計

監修者紹介

稲葉 裕(実践女子大学生活科学部・食生活科学科 教授)
1973年東京大学医学部医学系研究科・保健学修了。東京大学助手、ハワイ大学がんセンター協力研究員を経て1979年順天堂大学助教授、1988年同大学教授、2008年より現職。保健学博士、医学博士。

稲葉 裕先生

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