年をとると体温にも変化が

公開日2021.08.30

※当コンテンツの内容は2021年7月時点の情報となります。

体温は加齢にともなって低下します。その原因は、筋肉や脂肪組織などの体の組成や基礎代謝に関係していると考えられています。
監修:永島 計 早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))

年をとると体温は下がっていきます

高齢者は0.2℃以上低くなります

ヒトの体温を腋窩(えきか:ワキの下)で測ると、乳幼児では平均37℃台と高いのですが、年齢が上がるごとに少しずつ下がり続け、10歳くらいで一定の値に落ち着きます。しかし、高齢になると再び低下してきます。 実際に50歳以下の人と65歳以上の高齢者に分けて腋窩温を測った日本の報告によると、50歳以下の平均が36.9±0.3℃なのに対し、高齢者では36.7±0.4℃でした。高齢者は50歳以下の人より平均値で0.2°C低い値を示しています1)

1)入来ら:老人腋窩温の統計値.日老医誌12,172-177,1975

生理機能が全般に衰えていきます

生理機能のバランスも変化します

加齢にともなう体温の低下は、なぜ起こるのでしょうか。
原因がすべて明らかになっているわけではありませんが、年をとるにつれて起こる筋肉量の低下、相対的な脂肪量の増加、活動性の低下、これらに伴う代謝の低下などが関係していると考えられます。
さらに、体全体の生理機能にも関係すると考えられています。いくつかの身体機能について、30歳以降の生理的な変化をみると、その低下速度は一定ではなく、機能ごとに異なっています。つまり各機能が若いころより低下して全般的に落ちているだけでなく、その年齢における生理機能のバランスも変わっているのです。
このような生理機能の衰えが、体温を調節する機能の低下にも結びついているのだと考えられます。

図1 30歳以降の老化にともなう生理機能の変化

監修者紹介

永島 計

早稲田大学人間科学学術院 体温・体液研究室 教授(医師、博士(医学))

1985年京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学附属病院研修医、修練医、大阪鉄道病院レジデントを経て、京都府立医科大学大学院博士課程(生理系)修了。京都府立医科大学助手、YALE大学医学部・John B Pierce研究所ポストドクトラルアソシエート、王立ノースショア病院オーバーシーフェロー、大阪大学医学部助手•講師、早稲田大学助教授を経て、2004年から現職。日本スポーツ協会スポーツドクター、日本医師会認定産業医。

永島先生
からのメッセージ
加齢に伴って、筋肉や心臓、肺、脳などの機能が衰えていくのはよく知られています。これらの機能低下の予防のため、脳トレ、筋トレや散歩の推奨、様々な健康イベントの開催などが行政レベルでもなされています。しかし、体温やその調節機能も加齢とともに変化していくことは意外に知られていません。この体温の変化は高齢者によく見られる、“眠れない”、“寝てもすぐ起きてしまう”などの睡眠障害や、熱中症の被害者になりやすいことにも密接に関係しています。高齢者ご自身や家族、高齢者にかかわる仕事につかれている方々に一読いただき、高齢者の体温の特徴を知っていただき、より健康的な生活を送るための方法の一つとして参考にしていただければ幸いです。
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