低体温症の予防と対策このページを印刷する

低体温症にならないための注意と、なったときの基本的な処置について。

監修:山本保博(東京臨海病院 病院長)

低体温症を予防する

低体温症になりやすい人と状況

偶発性低体温症になりやすいのは、次のような人たちです。

  1. お年寄り・小児
  2. 栄養不足や疲労
  3. 水分不足
  4. 糖尿病・脳梗塞など神経の病気がある人
  5. ケガをしている人

低体温症を予防するには、以上のような状況を避けること、つまり栄養を十分に取り、寝不足や過重な労働など疲労の原因となることをしないという、一般的な健康管理に気をつけることです。とくに上に挙げたような人たちは注意が必要です。

低体温症になりやすいのは、次のような人たちです

睡眠薬をお酒で飲まない

低体温症のいちばんの原因であるお酒や睡眠薬については、きちんと節度を持つということにつきます。泥酔するほどお酒を飲まない、睡眠薬は決められた量と飲み方を守ることが重要です。なかには睡眠薬をお酒で飲む人がいますが、これは危険なので、すぐにやめてください。 睡眠薬をお酒で飲まない

災害や登山などを前提とした応急処置

もっとも基本的な処置

寒くて震える症状の出る人がいたら、すみやかに救援要請をします。近くに人がいれば迷わず協力を頼みます。

  • 風・雪・雨を避ける。できれば屋内に収容する。
  • 湿った着衣・靴下・手袋を暖かく乾燥したものに取り替える。
  • 毛布や寝袋などで患者を覆う(できれば前もって暖める)。
  • わきの下やそけい部に湯たんぽなどをあてて体の深部の内臓をゆっくり温める。
* 体の深部とちがい、体表面を温めていいのは、軽度低体温症だけですから注意が必要です。

簡単に作れる非常用の湯たんぽ

都合よく湯たんぽが手に入るとは限りません。
即席の湯たんぽ作りを覚えておくと役に立つかもしれません。

  1. 熱湯にタオルを浸す。
  2. ビニール袋を二重にして、熱いタオルを入れ、口を縛る。
  3. 袋をさらに乾いたタオルでくるめば出来上がり。
簡単に作れる非常用の湯たんぽ

軽度の低体温症は回復しやすい

軽度の低体温症の処置

体温が35〜33℃の低体温はどんな加温法をしてもよく回復します。患者と一緒に添い寝をするのも有効です。

  1. 炭水化物を含んだ温かい飲み物を、すこしずつ、ゆっくりと与える。くず湯やお汁粉、コーンスープなどが最適。
    * お酒やコーヒー、紅茶は禁止。アルコールは血管を拡張させて熱を奪う。コーヒーや紅茶に含まれるカフェインは利尿作用があり、脱水を助長する。
  2. タバコは絶対に禁止。ニコチンは血管を収縮させるので凍傷になりやすくなる。

中等度の低体温症は十分な注意を

中等度の低体温症の処置

体温が33〜30℃の低体温は、ちょっとした刺激で不整脈を起こす心配があるので、着替えも自分ではさせないなど、十分に注意をはらう必要があります。

  1. 体を動かさない。
  2. 体をていねいに取り扱う(不整脈が起きないように)。
  3. ワキの下や、そけい部に加温を行いますが、急速な加温はかえって不整脈を誘発することがあります。

* 体表面の加温は禁止
病院に連れていく前に体表加温をしない。裸での添い寝も禁止。 中等度以上の低体温の場合、体表面を加温すると冷たい血液が心臓にもどって中心の臓器などの温度が下がり、ショックを起こすことがある。
手足のマッサージ、心臓が止まっていない場合の心臓マッサージ、手荒に搬出したり、歩かせたりなども避ける。
中等度の低体温症の処置

重症の場合は人工呼吸や心臓マッサージが必要なことも

重症の低体温症の処置

体温が30℃以下の低体温は、呼吸や心拍の有無・状態を確認し、適切な処置をする必要があります。

  1. 呼吸
    無呼吸またはゆっくりした呼吸の場合、人工呼吸をする。マウスツーマウスで通常よりゆっくりと、時間当たりの回数も少なめに。
  2. 心臓マッサージ
    心拍がなかったら心臓マッサージが必要。辛抱強く続ける。心拍数が1分間に2〜3回のこともあるので、1分間くらいは頸動脈をふれて脈の有無を確認する。3時間以上も心肺蘇生法を続けて回復した人もいるので、あきらめずに続ける。
    とくに子どもは、回復する可能性が高い。

1 呼吸2 心臓マッサージ

医療機関での診療

いろいろな体温測定法・治療法が用いられる

医療機関では、食道温や直腸温など、身体深部の温度も測定されます。最近では低体温を測れるワキ下用の体温計も利用可能になっています。
心臓が停止しているときは、深部の体温が32〜34℃より高くならないと心拍は再開しません。そのため電気毛布や赤外線ヒーターなどによる表面加温以外に、中心部加温法も用いられます。加温した酸素を吸入させたり、加温した輸液剤を点滴するなどの方法です。また重症や心停止がある場合は、加温した腹膜潅流、人工透析、経皮的心肺補助装置(PCPS)などが用いられます。

救急現場で活躍する体温計

20〜45℃の広範囲の体温が測れる救急用の体温計があります。体温が極端に低い、あるいは高い患者さんの体温も測れます。 救急現場で活躍する体温計

凍傷について

血流が滞り末梢の組織が壊死する

寒い時期の災害被災地や冬山登山などでは、低体温症と並んで凍傷も心配です。凍傷は寒い環境によって手足などの末梢血管での血液の流れが悪くなり、そのために血液が流れにくい部分の組織が壊死することをいいます。おもに足の指、手、耳、鼻、ほほなどに生じます。
凍傷は壊死の深さによって表のように分類されます。

応急処置と搬送

凍傷になった人を安全な場所に移動し、雪や氷が付着していれば除去します。安全な場所に移したら、濡れている衣服、手袋、靴、靴下などを取り除き、ベルトやひも類など体を圧迫しているものがあれば取り除きます。低体温症にも注意し、温かい毛布で全身を覆い、温かい飲み物を与えて保温を図ります。
凍傷がある部分は乾燥したガーゼで覆い、水疱ができていたら破らないように注意します。患部はなるべく高い位置に持ち上げ、浮腫を防止します。
医療機関に到着するまでの間に、患部をマッサージしたり加温したりすることは禁止です。

凍傷の深度分類

分類 深度 傷害部位 症状
浅在性凍傷 T度
U度
表皮のみ
真皮まで
加温後灼熱感、発赤、腫脹、浮脹
加温後充血、疼痛、浮脹、水疱形成
深在性凍傷 V度
W度
皮下組織まで
骨、筋組織まで
暗紫黒色、壊死、潰瘍
骨、軟骨、筋の壊死

監修者紹介

山本保博(東京臨海病院 病院長)
1968年日本医科大学大学院卒業,1975年日本医科大学病院救命救急センター。その後救急医学教授などを歴任し、2008年に東京臨海病院・院長。日本救急医学会指導医、救急科専門医。日本外科学会指導医、認定医。日本熱傷学会認定医。日本消化器病学会認定医。日本感染症学会インフェクションコントロールドクター認定。日本集団災害医学会理事長、日米医学医療交流財団理事、外務省参与・救急災害担当大使、厚生労働省・厚生科学審議会専門委員なども務める。防災功労者内閣総理大臣賞、救急医療功労者厚生労働大臣賞などの各賞を受賞。

山本先生からのメッセージ

偶発的な低体温症は、「凍えて死にそうになる」状態であり、現代日本の生活では起こりにくいことと考えられがちです。しかし登山で遭難したり、サーフィンで流されたり、災害被災直後の避難所などでは起こることがあり、亡くなる方もおられます。また飲酒後や睡眠薬を服用した後、寒い場所で寝てしまったときに起こることも多いのです。 ご自身やご家族、友人のために、この疾患の性質や簡単な予防法・対処法などを頭に入れておけば、役立つことがあるかもしれません。

山本保博先生

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